book report

ねたばれを考慮する余地がありません

明日が世界の終わりでも /榎田尤利

1年半以上の積読本を消化しましょうキャンペーンです。
largoと表題作以下関連作の詰め込み作品集。榎田先生が大好きで読みたくて発売日に買ったものの、痛いおはなしと聞いていたのでもぞもぞしたまま読まずに年月経ってしまっていました。

「largo」
音大生3人組のおはなし。六実が、まったく違うタイプの大学生ふたりの間でゆらゆらする、そんな印象受けました。
前原くんが、アヅマリシリーズの王子沢くんを思い出すタイプでした。王子沢くんはほんとういい奴で、当て馬にしておくのがもったいなさ過ぎて、ほんとう、伊万里なんかやめて王子沢くんにしろよ!!!!! って吾妻くんに何度も訴えたくなったけれど、 前原くんはこわい子だなぁと思いました。前原くんでスピンオフしたら、一穂先生のmeet,again.のようになるのかなぁ。
舞台そのまま、音をベースに物語が進んでいく、どこか怖いおはなしでした。暖色のすぐ裏に闇が広がるおはなし。榎田先生のおはなしはコメディであれなんであれ、闇と同居してるよなぁといつも思います。
六実が少しずつ成長していく過程はとても好きでした。ていうかやっぱり榎田作品好きです。

「明日が世界の終わりでも」
痛い、痛い、とレビューで聞いていた、 よりも痛々しさは感じられなかった。全体的にかなしくて、やっぱり闇が広がっているけど、「largo」よりもよっぽど優しさに満ち溢れてるおはなしだなぁと思いました。
愛って、すごいなぁ。玲治さんも望くんも悠一さんも、心が綺麗すぎるんだなぁ。城下さんは仲間にいれてあげないよ!!!!!!君はこの物語唯一の凡人だ
疵は隠すべきなのだろうか。見せる勇気はないのだけれど。みんなおかしい。けど、おかしくない。彼らのようになりたいとは思わないけれど、わたしも愛している、という無二の感情を持ちたい。憧れる。
狂気と紙一重の優しさをじっくり描いた作品は、榎田先生らしいなぁと思いました。やさしいやさしいおはなしだった。「集い」ラストの藤先生のイラストがたまらなく素敵だった。やさしさいっぱいだった。