book report

ねたばれを考慮する余地がありません

家族になろうよ /月村奎

この直前に宮緒先生の蜜家族を読んでいて、思っていた以上の鬱っぷりに動揺して、すぐ手元にあった、きっと間違いなくハッピーエンドであろう月村作品を手に取ったのですが
奇しくもともに「恵まれない家庭環境のなかひとりでたたかう心を閉ざした苦学生」受けであり、けれども方向性は右に進むか左に進むかの違い なんてもんじゃなく右に進むかそのまま宇宙船に連れられて宇宙の果てまで飛んでいくかくらいおはなしに差があって、 うっかり、BL界の多様性に感動してしまいました。
空くんが平凡にまっすぐで、いい子で、愛しくてたまらなかった。わたしだって空くんと同じ。就活の件で苦いこと思い出してしまいましたが、そこで隼人が肯定してくれたことで、空くんだけじゃなくてわたしも一緒にほっとしてしまった。空くんなんかよりわたしのほうがよっぽどかみっともないし、醜いよ~~~~ 空くんはいい子だよ……
これから堤家で充分に癒されて欲しいです。地域密着型の自営業一家にそのままポンとはいっていったら、周りの目があれこれ、これから大変だろうけど。堤家のあたたかさをもってすればきっと乗り越えられるね!月村先生の書くあたたかさは極上です。こころがぽかぽかする。消しゴムに名前書いてしまう、空くんの心が好き。空くんの気持ちを知ってから、じっくり誠実に自分と向き合って、真摯な答え方をする隼人の優しさがほんとう好き。お姉さまもお父さまも好き。ちびふたりもほんとう好き。
ほんとう素敵に優しい物語だった。空くんと一緒にわたしも癒してもらえました。わたしも就活でもっとちゃんと自分と向き合えばよかった。あの頃に戻ってやり直したとしても、あの頃の自分じゃあ何度やり直しても同じだろうけれど。就活と時期を同じくして、この本と出会っていたらば、また別なんだろうなぁ。
特別目新しい展開なんてないのだけれど、月村先生のいいところいっぱいつまった優しいご本に出会えてほんとうに幸せです。